人間という生き物の誰もが、自分より劣ったものを見て発奮する性質を持っているとするならば
俺のようなひともどきが生まれてきてしまった理由もこじつけられる
9割の人間が、1割のひともどきを踏み台にして進化していく
人類が、よりよくなっていくために
失敗作のモデルが必要だっていうことだろう


あんな風になりたくないという危機感
あんなのにならなくてよかったという安堵と歓喜


そういった感情をリアルに、ダイレクトに人間たちに与えるために


どれが成功例で、どれが失敗作か、分かりやすくするため
成功例には優越感、失敗作には惨めさを味わわせるために
俺たちは同じケースに放られる


そして人のなりそこないどもはいくらでも虐げてもよいという暗黙の法
人間に宿る加害欲を満たすための道具として
俺たちは生まれた


最小限の犠牲で、多くの発展を望めるシステム
これはまさしく正義だろう
俺が犠牲になるのを嫌だと言えば
正義が俺を殴るだろう
そのさまを
誰もが笑顔で眺める


俺は世界に死ねと命令され続けていると思っていた
それに歯向かって必死に生きているつもりだった
戦っているつもりだった


そうではない
俺は死んではならない
生きて、指を差されて笑われなければならない
俺以外の人類の幸福のためにだ


どんな酷い目にあっても、死にたくないと思えたのは
そうプログラムされたからであって
俺の根性も反骨も怒りも悲しみも、すべて無関係だった


俺が戦うべきなのは
俺の命だ
それを自ら絶てたそのときこそ
プログラムに対し、強固な意志を以って逆らった証を得ることができるだろう


が、そこまで悟っても俺は戦う気が起こらない
強固な意志・・・?
そんなものがないからこその
失敗作なのだ


俺はこれからもプログラムに従って生き続けるだろう
俺が憎んでやまない連中の糧になるために
勇気のないために何もできずに
文句だけ内にためこんで
いずれ惨めに無価値に死ぬだろう


無念だ